生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟・第6回口頭弁論期日が、2017年11月1日、東京地方裁判所103号法廷で行なわれました。閉廷後には報告集会が弁護士会館(東京都千代田区霞が関1-1-3)5階507ABC会議室で開催されました。

 当記事は「STOP!生活保護基準引き下げ」編集部員(2名)による裁判と集会のリポートです。

お知らせ

 まずは次回法廷の告知です。第7回期日は、2018年2月9日(金)15時~、東京地裁103号法廷が予定されています。皆さま、どうぞ傍聴応援をお願いします!

裁判

 法廷に入室して最初に気づいたのは、傍聴者が前回に比べて増えたことでした。若い人たちが目立ちます。その多くは上智大学国際教養学部 David Slater 教授の講義 Anthropology of Japan (日本の文化人類学)を履修している大学生のようでした。なお裁判傍聴は「必修」ではなくて希望者のみのオプションなのだと、近くの傍聴席にいた方(学生)からお聞きしました。

 裁判では高田一宏弁護士による原告陳述が行なわれました。以下は「STOP!生活保護基準引き下げ」による要約です。

「生活保護基準を下げる、意思決定の過程も根拠もきわめて不透明だ」
「被告が提出した書面には『なぜ引き下げという結論に至ったのか』『いかなる議論がなされたのか』がほぼまったく書かれていない。そういったやり方が日本の官庁でありうるのか?(ありえないだろう)」

 今回の法廷では被告が原告からの質問にちゃんと答えようとしない不誠実な姿勢が(いよいよ)明らかになってきました。裁判長が「(先に行なわれた)進行協議で、原告による資料請求の求釈明(※注)に対し、被告は誠実に理由を説明するべき」「争うなら争うで、立ち居地を明らかにしていただきたい」と被告を注意し、資料請求に応じるべきと促していました。

(※注:求釈明とは釈明権に基づき裁判の当事者の一方が裁判所に対し相手方に対し弁論の不備、不明な点を問いただしその陳述や説明を促す権能を裁判所に発動するよう求める事。以上の権利を釈明権という。「コトバンク 釈明権」)。

 全体として被告側はアタフタしている印象がありました。さらには裁判に真面目に取り組んでいないのでは? というような雰囲気もあります(あくまで一傍聴者としての「印象」ではありますが……)。生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟においても、被告である国・行政の基本的姿勢は、公文書も含め原告の情報開示請求を拒否しているのです。世間を騒がせ続けている「森友・加計学園問題」にみられる省庁の隠ぺい体質と変わらないものがあるのではないかと思います。

 生活保護は人々の生命・生活を守る「いのちにかかわる」制度です。もしこれがなければ「人が死ぬ」のです。その保護基準を引き下げるのであれば、国・厚労省は慎重の上にも慎重を重ねて事を進めなくてはならないはずです。そして結論に至るまでの過程や根拠を公開するのは、公僕として最低限の義務でしょう。それなのに被告らは神聖な義務を放棄して「下げたいから下げる」というような強引なやり方を押し通した。明白な生活保護法違反であり、憲法違反です。こういった被告らを弁護する者たちが当裁判に本気で取り組めないのも(あるいは)無理もないのかもしれません。けれども、自分のいのちがかかっている当事者や「いのちを尊ぶ」「社会をより良いものにしようと願う」全ての人たちにしてみれば「ふざけるな!」というしかありません。

報告集会

 閉廷後、弁護士会館に移動して、報告集会が開催されました。最初に山川幸生・高田一宏・白木敦士3人の弁護士による裁判解説がされました(弁護団長・宇都宮健児弁護士は出張中のため欠席)。以下は「STOP!生活保護基準引き下げ」による要約です。

「裁判最大の争点は、自民党が選挙公約で生活保護費削減を掲げ、公約の実現を目的として引き下げを強引に行なったこと。これは明白な生活保護法8条違反だ」
「今日の原告陳述で高田(弁護士)が指摘したように、被告は生活保護基準引き下げの過程・根拠を明らかにしていない」
「厚生労働大臣から諮問を受けた社保審・生活保護基準部会(基準部会)の先生たちは『生活保護費を削減せよ』なんてことは一言も言っていない。それなのに国・厚労省は保護費の大幅削減を実行した。基準部会長代理の岩田正美さん(日本女子大名誉教授/社会福祉学)は『あとで、とんでもないことが起こったら、 私たちは責任を負うことができません』『生命にかかわる支出です。安全に、慎重に検討してほしい』と強く異議を表明している(インタビュー記事「結論ありきで生活保護削減を決めた厚労省の非情」)。

 報告集会では岩田鐡夫さん(※写真)が傍聴者数引き上げに貢献されたことが明らかにされました。岩田さんはカトリック聖イグナチオ教会の信徒で、生活困窮者・野宿者・福島県からの避難者などの支援に長年尽力されている方です。社会福祉士、精神保健福祉士でもあります。

岩田鐡夫ささん

 岩田鐡夫さん「前回傍聴したとき傍聴者が少ないかなと感じた。ふだんカレーの炊き出し・夜回りなどを一緒にやっている学生さんたちに声をかけたら、来てくれました。ありがとう」

 さらに生活保護利用当事者・支援者・他県の生活保護裁判原告・大学教員・学生など多くの方たちの発言が続きました。質疑応答では生活保護を利用されている方からの「『はっさく裁判』という通称 は内容が分かりにくいので、もう少し工夫をして欲しい」という意見、別の参加者からの「この裁判は『民事』なんですか?」という基本的だけれど、じつは多くの人が明確には認識していなかった質問も出ました。後者の質問には弁護団から「民事裁判です」という回答がありました。こうして熱気のうちに報告集会は終わりました。

 原告・弁護団・当事者・支援者・傍聴応援者・参加された全ての皆さま、お疲れさまでした。繰り返しになりますが、次回第7回期日は、2018年2月9日(金)15時~、東京地裁103号法廷です。傍聴者の多い・少ないによって裁判の「勢い」も変わってきます(という説もあります)。人々の生命・生活を守るための大切な裁判です。負けるわけにはいきません。どうぞ傍聴応援をお願いします。

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