【報告】貧困拡大社会にNO! 生活保護費引き下げ反対集会

レポート

貧困拡大社会にNO! 生活保護費引き下げ反対集会」が、2018年6月30日、東京都立川市女性総合センター(アイム)で開催されました。雨宮処凛さん(作家)と山岸倫子さん(ソーシャルワーカー)の講演、生活保護削減反対国賠訴訟三多摩原告団、三多摩アクション、地方議員の発言が行なわれました。熱気に満ちた内容充実した集会でした。

 集会の主催は生活保護費大幅削減反対!三多摩アクション。三多摩の皆さまとは、安倍政権(第2次以降)による生活保護改悪に反対する運動で、これまでしばしば協働・連帯させていただいてきました。「生活保護」「生存権」「憲法25条」「いのち」などを共通キーワードとする仲間です。三多摩アクションの力強さと着実さには何時もながら驚かされています。もちろん嬉しい驚きです。

貧困拡大社会にNO! 生活保護費引き下げ反対集会

 集会冒頭は吉村一正さん(NPO法人 さんきゅうハウス共同代表)から挨拶でした吉村さんは「『生活保護受給者』ではなく『利用者』という言葉を使うことにしている」と明言。「生活保護を利用する」という表現は(当記事執筆者の記憶では)2012年春にはすでに一部の当事者により使われていました。その後、「利用」派は──当事者・支援者・法律家・研究者・政治家など──徐々に増えてきました。吉村一正さんもこのような言葉の歴史を知り「利用」と言うことにしているそうです。吉村さんは挨拶の最後に「『小異』を残しつつ『大同』につき、憲法を守る政府をつくろう!」と力強く呼びかけました。

 雨宮処凛さん(作家・活動家)の講演はインタビュー形式で行なわれました(※本人の希望)。インタビューワーは吉田和雄さん(さんきゅうハウス共同代表)。雨宮処凛さんが貧困問題に取り組み始めたのは2006年、31歳のときだったそうです。「それから12年経っても状況は全然よくならない」「議論も情報も積みあがっていない」「貧困は自分より年下の世代にはとてもリアルな問題」「貧困を日本社会が『発見』したのは、10年遅れではなかったか?」という思いが雨宮さんにはあります。と同時に雨宮処凛さんは「生活保護は人のいのちを救う」という確固とした実感を貧困・労働運動を通じて得たそうです。「誰でも困ったときは早めにSOSが出せる」「気軽に『助けて』と言える関係性と社会をつくってゆく」。それこそが貧困に対抗する道ではないかと提起して、雨宮処凛さんのインタビュー講演は終わりました。なお雨宮さんは近年の韓国でフェミニズムが盛んであることなども話されましたが、当記事では(とっても残念ながら!)割愛させていただきます。

雨宮処凛さん(右)、吉田和雄さん

 山岸倫子さん(ソーシャルワーカー・大学講師)は講演の最初に「母親として自分の子どもに豪邸や財産は残せないけれど、困ったときは躊躇わずに社会福祉を利用するという言葉(知識)は伝えることができる」と話されました。そして、生活困窮者自立支援法はいわゆる「水際作戦」のための法律と思われていることが多いようだけれど、これはよくある誤解だ。この法律は社会資源に到達するプロセスを支える役割を果たしていると指摘しました。今の社会には「困っている人」が急増している。そして困っている人たちが周縁化されている。これには産業構造・家族形態・政治経済の変化が背景にあり、問題が複雑化している。生きづらさを生き抜くためには、誰でも「自分は自分のままで生きていい」という感覚を持つこと、権利を持っていることを認識することが重要。誰かの小さなSOSを見逃さないようにしたい。困っている人たちを社会に戻すことこそが「正しい」という主流派の価値観には問題があるのではないか。働き方を変えることを含めて、新たなメインストリームを作り出していこうと呼びかけました。山岸倫子さんのような方がソーシャルワーカーであることに勇気を頂いた思いがありました。

 続いて三多摩地区の地方議員によるアピールの時間。次の方たちが発言されました(敬称略)。どの議員の方も地域に根ざした活動をしっかり実践されていることがよく分かりました。外見が「政治家」らしくない人が多かったのも印象的でした(いい意味で)。また三多摩では当事者・支援者・政治家・法律家・研究者などの連携が効果的に働いていることを常々感じます。

左から、片山かおるさん、山本ようすけさん、大沢ゆたかさん、上村和子さん、有賀精一さん

 最後に生活保護裁判原告(複数)の発言がありました。2018年年5月14日、東京地方裁判所に提訴された「新生存権裁判」にはすでに50人以上の原告がいます。このうち三多摩アクション関係の原告は12名だそうです。人々の生存権を奪い──雨宮さんの言葉を借りれば──《弱い人は見捨てますよ》というような安倍政権・国・地方の姿勢を強く批判し、今後の裁判を戦い抜くことが、原告(生活保護利用当事者)たちにより宣言されました。「STOP!生活保護基準引き下げ」編集部員も三多摩の皆さまと共に戦っていきたいと思います。裁判のリポートなども当ウェブサイトに掲載してゆく予定です。今後ともよろしくお願いします。

参考文献
「貧困拡大社会にNO! 生活保護費引き下げ反対で集会」
大岡華子(大学教員・社会福祉士)
新聞テオリア」2018年8月10日第71号