【報告】生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟(はっさく訴訟)第11回口頭弁論期日

生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟(はっさく訴訟)第11回口頭弁論期日 レポート

生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟(はっさく訴訟)第11回口頭弁論期日(2019年2月22日/東京地方裁判所103号法廷)において原告は提出書面陳述・弁護団意見陳述・原告本人の意見陳述を行ないました。しかし被告(国)は──相変わらず──不合理・不誠実な姿勢に終始し、生活保護基準引き下げに至った根拠と過程を明示しません……

生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟(はっさく訴訟)は、被告(国)による2013年〜2015年生活保護基準引き下げに対して、原告(生活保護利用者33名〈現在〉)が賠償を求める裁判です。2015年6月19日に提訴されました。

生活保護費削減に関する裁判は全国29都道府県で計1000人以上の原告により争われています(参考サイト:いのちのとりで裁判全国アクション)。そして東京では「はっさく訴訟」と「新生存権裁判」(2018年5月14日提訴)、2つの国賠訴訟が係争中です。両者は異なる裁判です。混同しやすいのではないかと思いますので、どうぞ注意ください。

次回の告知です。
第12回口頭弁論期日は、2019年5月7日(火)15時から、103号法廷で行なわれます。
14時20分から裁判所・桜田門側エントランス前付近で事前街宣、法廷終了後には弁護士会館の会議室508ABで報告集会が開催されます。

生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟(はっさく訴訟)第11回口頭弁論期日

☆法廷

被告(国)はプロセスを出せず、原告は出せと言い続けている。
当裁判の「これまで」を原告弁護団の西田美樹弁護士が簡潔にまとめた言葉です。
原告側は「生活保護基準引き下げに至ったプロセスと判断の根拠を明らかにせよ。関連するメモや議事録などの書面を提出せよ」と要求し続けてきました。
にもかかわらず、被告はそれらを出そうとしません(できないのか?)。そればかりか《原告が回答を求める法的根拠はなく、被告が原告の質問に答える必要はない》とまで主張しだしたのです。

法律の素人であるわたしたち(「STOP!生活保護基準引き下げ」編集部員)も被告の言い分は不合理かつ不誠実であると強く感じます。こうした被告の姿勢のため、裁判はなかなか前に進まず「どうどう巡り」をしているのではないでしょうか(?)。なんとも歯がゆいのです。「税金の無駄遣い!」とすら思ってしまいます。

裁判所も被告に対する疑念を深めているようです。他の生活保護訴訟においてですが、裁判長が被告に対して《被告の言う「(引き下げの)合理的な理由」の中身がさっぱり分からない。》《説明としてこの書面で充分とお考えなのでしょうか?》《ちゃんとした内容のある書面を提出してほしい。》といったきわめて厳しい裁判指導を行なった実例もあります(東京生活保護削減反対国賠訴訟〈新生存権裁判〉第2回口頭弁論期日/2019年2月6日/東京地裁103号法廷)。

以下は原告側・白木敦士弁護士による意見陳述の要約です。
被告(国)は「厚労労働大臣は生活保護基準部会(※専門家・学識者により構成)の報告に拘束されない、考慮要素のひとつに過ぎない」と主張しているけれど、これは誤っていると指摘せざるを得ない。さらに基準部会の報告が出る前に、国は結論を出していた。つまり最初から「引き下げ」ありきだったのではないか。当裁判において、被告は引き下げの根拠提出を一貫して拒絶し続けている。さらにその責任を原告に転嫁している。被告による「証拠隠し」が行なわれている。

原告「A」さん(女性)による意見陳述(要旨)です。
団地で暮らしているが、近隣住人による生活保護利用者へのいやがらせは年中ある。悪口を言われる。私物を勝手に移動される、破損されるなど。行政職員から「生活保護利用が目的で(当地に)引っ越してきたんじゃないの?」と言われたこともある。生活保護利用者を初めから「罪人」あつかいをしないでください。

☆報告集会

閉廷後に報告集会が弁護士会館5階会議室で行なわれました。

今回原告陳述をされた「A」さん。
原告であり続けることの負担は大きい。バッシングやいやがらせなどをされるかわからないと不安だ。この先いつまで裁判にかかわり続けなくてはならないのか、という思いはある。

裁判を応援する会・呼びかけ人の稲葉剛さん(つくろい東京ファンド)からは《厚生労働省の「物価偽装」による生活保護基準引下げの撤回等を求める研究者共同声明》(2月27日に厚生労働省内で記者会見)のお知らせがありました。

埼玉訴訟原告の方(男性)から、埼玉裁判次回(3月6日)の告知と、全国および埼玉裁判の見通しと戦略について情報が報告されました。

当原告の男性からは裁判をできるだけ迅速に進めて欲しいとの要望が出されました。

以下は「STOP!生活保護引き下げ」編集部員による感想です。
日本では一般に裁判は長期化しがちだと聞きます。このたびの裁判も地裁で3年くらいかかるかもしれず、さらに地裁で勝訴した場合も、被告(国)はほぼ確実に上訴してくるため、さらに月日を費やすことになりそうです。
このような裁判を最後まで戦い抜くのは、原告・弁護士・支援者にとって、大変なことであるのは言うまでもありません。
原告団はひとつの運命共同体──同じ舟に乗った者同士──連帯(信頼関係)を強化し続けなければならないでしょう。
そのために「STOP!生活保護引き下げ」も自分たちにできることを(ささやかではあっても)着実に実行していきたいと思います。

さて再び次回の告知をさせていただきます。
第12回口頭弁論期日は、2019年5月7日(火)15時から、103号法廷で行なわれます。
14時20分から裁判所・桜田門側エントランス前付近で事前街宣、法廷終了後には弁護士会館の会議室508ABで報告集会が開催されます。
傍聴応援をよろしくお願いします。

☆関連資料

白木敦士弁護士作成の「傍聴の見どころ」を、弁護団の了承を得た上で、転載させていただきます。

☆転載開始☆

4 事件の進行予定(予定)
(1)原告提出書面の陳述
(2)弁護団・意見陳述
(3)原告本人・意見陳述

5 傍聴の見どころ

(1)ポイントその1

これまで、被告国側からは、以下の点に対する主張がなされました。
被告国が裁判所に提出した反論の書面の目次を抜き出しますと、以下の通りとなります。
①生活保護基準の設定及び改定は、専門家によって構成される審議会等の検討結果に基づくものでなければならない旨の原告らの主張に理由がないこと
→つまり、「生活保護基準の設定及び改定は、専門家が議論した検討結果に基づかなくてもよいのだ!」という反論です。

②「原告らは、老齢加算東京訴訟最高裁判決及び老齢加算福岡訴訟最高裁判決の意義を正解していないこと」
→つまり、「厚生労働大臣には広範な裁量権が認められているところ、基準引き下げについての政策判断は問題がない」という反論です。

③「被告らが本件保護基準改定の判断過程について自らの判断に不合理な点がないことについて何ら主張立証していない旨の原告の主張が失当であること」
→つまり、「原告は、国が違法なことをしたというのなら、自分で証拠を探して提出すればよく、国が資料を開示しないことは問題がない。」という反論です。

次回では、これらの被告の主張に対して、原告らによる反論の書面を提出する予定です。

(2)ポイントその2

従前、我々は、平成25年から始まった段階的引き下げに際して、いかなる議論が厚労省内でなされ、また、いかなる資料が作成されたのかとの点について、被告国に対して、資料の開示を求めて参りましたが、国側は「これ以上、回答の要はない。」、「資料が残っていない。」として、資料の開示を拒んできました。
今回は、平成30年に実施された基準引下げに際しては、「さすがに資料がないとは言わせない!」として、開示を求めて行こうと考えています。平成30年における基準引き下げ時に作成された資料や、開催された会議等が特定されれば、本訴訟で問題となっている、平成25年から始まった基準引き下げの際においても、同様の資料や会議が存在したことを推認することができるからです。

(3)ポイントその3

生活保護基準改悪に対する想い、国側の訴訟姿勢について、原告本人か直接語っていただく予定です。

もっとも、以上はあくまで現時点における予定となり、変更となる可能性があることをご了承ください。

☆転載終了☆