東京・生活保護削減反対国賠訴訟(新生存権裁判)の学習交流会『ココおかしい! 生活保護基準引き下げの違法性』が、2018年12月13日、東京都立川市のさんきゅうハウスカフェで開催されました。「STOP!生活保護基準引き下げ」編集部員1名も参加させていただきました。とても充実した集いでした。皆さま、ありがとうございました!
東京・生活保護削減反対国賠訴訟(新生存権裁判)の趣旨は以下の2点です。
- 生活保護基準引き下げを前提とした変更(減額)決定の取り消しを求める。
- 憲法(第25条)により保障された《健康で文化的な最低限度の生活》を維持するに足りない保護費の支給が継続され、《最低限度》を下回る生活を強いられたことに対する慰謝料を求める。
第2次安倍政権が発足した2012年以降、国・厚生労働省は生活保護費の引き下げを強引に続けてきました。今後さらに削減されることも予定されています。これは自民党が「野党」であったときの政権公約《給付水準の原則1割カット》に基づいています。2012年春に突如吹き荒れた「生活保護バッシング」を記憶されている方もいらっしゃるでしょう。ある芸能人が「親への扶養義務を果たしていない」とされて強い批判に晒されました。自民党の某国会議員が先頭に立ち、あたかも「酷い不正」があったかのように糾弾を行ない、少なからぬマスメディアもバッシングに加担しました。けれどもその後、専門家らの検証によって、当該ケースに違法性はまったくなかったことが明らかになっています。
「不正」でも「違法」でもなかった生活保護利用者と家族が過酷で大規模な攻撃の対象とされました。それに続いて生活保護費がどんどん削られていったのです。2012年「生活保護バッシング」とは社会保障費を削減するため意図的に実行されたものだったのだろうか? いわゆる「出来レース」だったのか? そう疑わざるを得ない構図になっています。ちなみに安倍政権が外国(主にアメリカ合衆国)から超高額な兵器を購入する際は野放図に「大盤振る舞い」を続けていること、およびメディア各社もたいして(?)批判していないことも併せて指摘しておきます。
言うまでもなく、相次ぐ生活保護費引き下げは利用当時者の暮らしを直撃します。《これでは生きていけない!》 《わたしたちに「死ね」というのか?》 当事者たちから悲鳴が上がりました。また法律家・学識者・貧困問題に取組むNPO関係者などからも 《保護費引き下げは人々の生存権を犯す、重大な人権侵害》 《正当な根拠を欠いた引き下げは違憲・違法》 という意見が多く寄せられました。その結果、全国29都道府県で計1000人以上の原告(生活保護利用者)が立ち上がり、裁判所に提訴して、現在係争中です。これらは「いのちのとりで裁判」と総称されています。
東京・新生存権裁判は、2018年5月14日、東京地方裁判所に提訴されました。現在の原告は50名以上です(※今後も希望者がいたら原告の追加は可能だそうです)。第1回口頭弁論期日は同年10月29日に東京地裁103号法廷で行なわれ、閉廷後に報告集会も開催されました。今後の予定を以下に記します。
第2回 2019年2月6日(水)14時30分〜
第3回 5月15日(水)14時30分〜
第4回 9月4日(水)14時30分〜
いずれも東京地裁103号法廷(東京都千代田区霞が関1-1-4/アクセス/定員100名)です。
学習交流会の主催は「NPO法人 立川さんきゅうハウス」、会場はさんきゅうハウスカフェでした。なお東京・新生存権裁判原告50数名のうち、さんきゅうハウスのメンバーは12人です。
講師は佐藤宙(さとう おき)さん。東京・新生存権裁判を担当する弁護士の一人で、三多摩法律事務所に所属しています。学習会の要点を以下にかいつまんで紹介します。
- 国・厚労省による2013年~2015年の3度にわたる生活保護費の大幅引き下げは未曾有(史上初めて)。
- 引き下げにあたって、国は生活保護利用当事者の声を聞いていない。
- 専門家や学識者によって構成された厚生労働省「社会保障審議会(生活保護基準部会)」の検討結果が引き下げにどのように反映されたか不明。基準部会では、引き下げを妥当とする意見はなく、むしろ警鐘を鳴らしていた。が、それらの意見は無視された。
- 国が《カット》の2つの根拠として挙げた「デフレ調整」「歪み調整」の2点はどちらも決定的な矛盾を抱えている。
- 国には立証責任がある。減額にいたった計算方式などについて国はきちんと説明しなくてはならない。
- しかし、被告である国は資料・書面を提出しようとしない(出せないのか? 出すと拙いことになる?)。
- 裁判所も被告の不誠実な姿勢を厳正に見ているようだ。これだけ大きな裁判で裁判長が被告に厳しい指導をするのは、滅多にないこと。
- 結論として、2013年~2015年の生活保護費引き下げは客観的・合理的根拠なく、政治的目的(政権公約の実行)に基づいて強行された。本質的におかしく、間違っている。憲法25条や生活保護法等関連諸規定に違反していることが明白だ。
- 生活保護基準は、社会保障の根幹であり、いちばん大切なところ。
- 保護基準は様々な社会保障制度(就学援助・介護保険料・保育料など)とも密接に関連している。生活保護基準が引き下げられれば、社会保障制度全体が後退する。
- この裁判は、生活保護利用者の権利を守ることはもちろん、国民全体にかかわる社会保障の後退を防ぐためにも、重要な意義をもつ。
学習会の後は交流会が行なわれました。写真の大皿料理は「さんきゅうハウスカフェ」シェフの「N」さんが作ってくれました。できあいのケータリングとかではありません。参加者みんなで美味しくいただきました。これから長く(なるであろう)厳しい裁判を闘い抜くには、こういった和気藹々とした集いもまた重要なのでしょう(とっても)。「STOP!生活保護基準引き下げ」記者(当記事の執筆者)も交流会に混ぜていただき、主に原告の方たちからお話を伺いました。次に原告「D」さん(仮名)の言葉(原告となることを決意した理由)を紹介させていただきます。
憤りが大きい。なんでこんなに国からないがしろにされなくてはいけないのか。ボーッとしていたら殺されてしまうと思った。
ところで、この日の参加費は「原告500円/支援者2000円」という設定でした。が、「STOP!生活保護基準引き下げ」記者は原告並みの500円にしていただきました。さんきゅうハウスの皆さまの御厚誼に心より感謝します。「STOP!生活保護基準引き下げ」ウェブ広報班は全員が無償ボランティアで、集会参加費や交通費などの出費も自己負担しています。さらに全員が生活保護利用当事者と低所得者です。そのため、参加費を500円にしていただいたことで大いに助かったのでした。あらためまして、お礼を申し上げます。ありがとうございました。
さて、日本国憲法第25条Tシャツを紹介します。Tシャツに条文を書き込んだのは「さんきゅうハウス」のメンバーで、東京・新生存権裁判原告団副団長です。この方は第2回口頭弁論期日(2019年2月6日)に当事者として原告意見陳述を行なう予定です。この写真だけは学習交流会に4ヵ月先立つ2018年8月12日、さんきゅうハウス夏祭り(立川公園ガニガラ広場)で撮影させていただきました。
日本国憲法
第25条
国は、すべての生活部面について、
社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
生活保護費を削減する
安倍内閣は、憲法違反では?
最後にふたたび裁判日程を紹介します。
第2回 2019年2月6日(水)14時30分〜
第3回 5月15日(水)14時30分〜
第4回 9月4日(水)14時30分〜
いずれも東京地裁103号法廷(東京都千代田区霞が関1-1-4/アクセス/定員100名)です。閉廷後に報告集会も行なわれる予定です。「STOP!生活保護基準引き下げ」ウェブ広報班記者も傍聴応援と取材に行かせていただきます。生活保護利用者の権利、国民全体にかかわる社会保障制度、人々のいのちを守るために、絶対に負けられない裁判です。勇気と根気をもって闘い抜き、応援し続けたいと思います。今後ともよろしくお願いします。