【報告】生活保護問題対策全国会議 設立9周年記念集会

レポート

生活保護問題対策全国会議の設立9周年記念集会 ”「健康で文化的な生活」は何処へ?~権利としての生活保障を求めて”が、2016年7月18日(月・祝日)、東京都板橋区のハイライフプラザいたばしで開催されました。
コンテンツ盛りだくさんの充実した集会でした。
参加された皆さま、お疲れさまでした。ありがとうございました。

ハイライフプラザいたばし

記念集会はここハイライフプラザいたばしの2階ホールで行なわれました。JR板橋駅から徒歩1分にあります。当日はとても暑い夏日だったので、この「近さ」にホッとした方も多かっただろうと思います。生活保護を利用されている方には病気や障害を持つ人、高齢の人も少なくないですから。

徳武聡子さん(司会)

当日の司会をつとめるのは徳武聡子さん(司法書士/生活保護問題対策全国会議事務局)。なお当日の様子は徳武さんが会場から実況連続ツイートしてくれました。徳武さん、いつもありがとうございます!
「健康で文化的な生活」は何処へ?~権利としての生活保障を求めて(7/18集会ツイート)

小久保哲郎さん

小久保哲郎さん(弁護士/生活保護問題対策全国会議事務局長)による開会挨拶「生活保護をめぐる最近の状況」。
小久保さんの現状報告はとても分かりやすく、時間を短く設定しているところもよいと思いました。
続いて、生活保護利用当事者2人の発言がありました。
・当事者「K」さん(東京原告/80代女性)「学童疎開の体験」「いのちの基本は食」「わたしも居場所をつくりたい。たとえ路上で始めることになっても」。
・当事者「H」さん(埼玉原告/30代女性)「2年前、埼玉訴訟の原告になって以来、古く(20年以上前)から信用してきた人たちからも厳しい声をかけられ続けた。《裁判の原告になれるくらい元気があるなら、働けば?》など。友人知人と疎遠になった」「ペットボトルに水道水を入れて持ち歩く(節約のため)」。

山田壮志郎さん

山田壮志郎さん(日本福祉大学社会福祉学部准教授)の基調報告「当事者アンケートにみる生活保護基準引き下げの影響」。この当事者アンケート(約650名が解答)に関する研究は興味深いものでした。生活保護利用者が日常のさまざまな面──特に冠婚葬祭など社会参加に関して──困難にされていることを実感しました。

田村智子さん

田村智子参議院議員(日本共産党)による挨拶が行なわれました。
田村議員「子どもの貧困を問題提起すると、自民党議員からも賛意が得られる」「奨学金に関して、世界の中でもきわだって冷たい日本」。
さらに山井和則衆議院議員(民進党)と山本太郎参議院議員(生活の党と山本太郎となかまたち)からのメッセージを司会の徳武さんが読み上げました。

さいきまこさん

さいきまこさん(漫画家)の基調講演「大きなパイを隠しているのは誰? こんな分け前じゃ生きられない!」。
さいきさん「私自身も生活保護予備軍」「生活保護制度を知ったのは6年前。少なくとも餓死や自死をしないでもよいという安堵感があった。けれどもその後状況は悪化しつつある」「自分のフィールドでできることを、と漫画『陽のあたる家』を描いた」「ナショナルミニマムの意味を共有しよう。『炭鉱のカナリヤ』が鳴かなくなる前に」。

パネルディスカッション

パネルディスカッション「権利としての生活保障を求めて」。向かって左からコーディネーターの稲葉剛さん(住まいの貧困に取り組むネットワーク)、花井圭子さん(労働者福祉中央協議会)、我那覇圭さん(東京新聞政治部記者)、山田壮志郎さん(日本福祉大学社会福祉学部准教授)、さいきまこさん(漫画家)です。
続いて会場からの提言 (1)利根川心中事件について(寺久保光良さん)、(2)公正な税制を求める市民連絡会(猪股正さん)がなされました。
パネルディスカッションと会場からの提言に関しては徳武さんのツイートまとめを参照ください。

尾藤廣喜さん

尾藤廣喜さん(弁護士/生活保護問題対策全国会議代表幹事)によるまとめで集会は終わりました。
尾藤さん「10年もやれば状況は変わって運動しなくてもよくなるかと思っていたけれど、状況はさらに重くなっている」「生活保障が権利であり憲法25条に基づく制度であることを改めて確認した」「自民党は生活保護法を再度変える(改悪する)ことを狙っている?」「厳しい状態が続くが、生活の底上げ自体を連帯して進めていかなければならない」。

参加された全ての皆さま、お疲れさまでした。
冒頭でも書きましたようにコンテンツの充実した、よい雰囲気の集会でした。
以下2点だけ意見させていただきますね。
(1)当事者の登壇がもう少し多いとよかった…かも?
(2)質疑応答の時間がなかったのは残念でした。残り時間が少なくなってきたため割愛されたのかもしれませんが、集会として「登壇者×聴衆の双方向性」は堅持されたほうがよかったかな、と思います。
ともあれ、お疲れさまでした。ありがとうございました。
生活保護は人々のいのちと尊厳を守る大事な制度です。
これからも皆で力を合わせて、生活保護制度が「よりよい」ものになるよう、地道な実践を重ねていきましょう!

(※掲載写真の1・4・5・6枚めは当編集部「S」、2・3・7・8枚目は中村の撮影です)